さて、今回のネタ。
”CT9A”型、”ランエボ”こと、”ランサーエボリューション”7から搭載された最大の武器のACDデバイス、そしてそれを駆動する、”ACDポンプ”の”修理”ネタです。
ポンプのAssy交換ではなく、ポンプ本体の”オーバーホール”、”修理”のネタ。
いまさらACDが何か?については省きますが、先代から大柄になった(ホイールベースが伸びた)ボディのCT型が、なんであんなにキュンキュン曲がるかに関しては、ACD抜きには語れません。
そんなACDですが、同時に爆弾でもあります。
理由は壊れやすいから? というよりは、壊れた時に、メーカーからのサポートが無いから。
多板センターデフクラッチプレートを動かす、油圧ポンプユニットの内部パーツが一切出ないので、ポンプのAssyでの交換しか手がありません。
オーバーオールとか、修理が出来ないんですよ。
そしてこのポンプAssyが高い!
2001年の段階でも、19万円くらいしましたが、2023年の現在、プラス10万円以上。
ポンプだけで約30万円!
これに交換工賃が、ディーラーなんかだと、6,7万円取られます。
正直言って、ポンプのAssy交換なんて、フルードのエア抜き入れても1時間掛からない程度の作業なんで、なんであんなに工賃取るのか、さっぱり分からないですけどね。
このポンプ故障ですが、エラーが起きると、ACDインジケーターのターマック、グラベル、スノーのすべてのランプが、同時点灯するのは周知ですね。
このランプ同時点灯、いつ起きてしまうか? CTオーナー達は、ヒヤヒヤしながら乗ってるワケです。
この同時点灯、実はポンプに異常がなくても、他の理由で発生する時がありますね。
例えば、ACDポンプリレーの故障。
あとはブレーキランプ周辺の電装系に断線かショートが起きた時とか。
まあ、そういった場合でしたら安く済むのでいいんですが、やっぱりポンプ故障だった場合。
ちなみに、ポンプ故障といっても、いくつかのパターンに分かれます。
MUTでのエラーコードでも、分けて表示される場合があります。
1)モーター故障で、ポンプを動かせてない。
2)トロコイドポンププレートか、センタープレートに問題があって油圧が発生してない。
3)ソレノイドバルブ故障。
4)油圧センサー故障
のいずれかか、または複合が多い。
82番が「ポンプ異常」だったかな?
81番が「動作異常」だかなんだかで、これはポンプモーターが動かない事を表してるそうです。
72、73番あたりが、ポンプソレノイドバルブ異常だったと記憶してます。
油圧センサーのエラーコードは忘れました。
ちなみに今回の私の場合は、81と82番。
モーター故障による、ACDポンプ異常ということになりますね。
実は、ACDポンプ故障は、今回で2回目。
1回目は、走行距離4万キロぐらいの時に起きてます。
その頃はAssy交換しか頭になかったのと、車両入れ替えしたラリー屋さんから、新品スペアパーツを大量に買い取ってたので、その中にあったポンプに交換しました。
ちなみにポンプの買取額は8万円。バーゲン価格ですね。
それからすでに16万キロ走行。
最初のは4万キロでヘタったくせに、交換後のヤツは、約4倍も走ってくれたんですよ。
そして今から1ヶ月ほど前の、とある夜・・・
駐車場にバックで入れてる時、忌まわしいインジケーター全点灯・・・
とりあえずディーラーで、エラーコードだけ確認。
ディーラーでも、「モーターが疑わしいですね~」という見解。
次は信頼するテストアンドサービスさんに電話で相談すると、やはりモーターだろうと同意見。
ちなみに、この電話の時に別件で衝撃の事実が・・・・後述します
さて、この段階での私、この先のプランをいくつか模索中。
まず、新品ポンプAssyという考えは、微塵もありません。
最初は、中古ポンプに入れ替えようか?って考え。
でも、ざっとオクを覗いてみても、ロクなブツが出品されてません。どれもこれも、ゴミのような出品ばかりです。オクの解像度の低い画像ですら、白サビだらけで、中身が朽ちてそうなブツばっか。
それなのに、やたらと高額な価格設定で、いくらなんでも、手を出すのはバクチ過ぎます。
こうなると仕方ない。
あとは、オーバーホール/修理ですね。
以前から海外のショップはチェック入れてましたから、三菱からは出ない補修パーツを持ってるんじゃないか?と思ってました。
そこで必要パーツを知るため、まずはポンプの構造を理解しようと、国内のサイトから片っ端からググってみました。
すると個人のブログで、DIYでやった方の記事が一つ。
この方の記事、内容が薄くなりがちな◯んカラにしては、なかなか面白かったです。
そして、あるショップのブログでも、内容は不完全ながら(結局Assy交換してる)、1つ見つかりました。
それらから得られた情報から、ポンプ故障の原因が、外的要素も大きいことも分かりました。
融雪剤によるアルミ腐食なんですね。
この腐食のせいで、ポンプ本体外側にむき出しになってるソレノイドが破損したり、内部腐食を起こしてトロコイドポンププレートの密着性が失われたりしてるワケです。
さいわい、私の車は下回りはサビがほぼありません。積雪地には行きませんし、塩カル道路を走った時は、なるべく水洗いしてます。
腐食はあんまり心配しなくても、良さそうです。
とは言っても、実際に現状を確認するまでは、この点が一番心配だったのです。
ポンプ本体が腐食による侵食を起こして場合、修理不可ですから。
電話でご相談したテストアンドサービスさんも、過去に何回かACDポンプを修理した実績があるそうなんですが。
しかしその中の1回は、腐食がひどくて作業中にボロボロとポンプケース本体が崩れてしまって、途中で修理不可になった事もあったそうです。
私の場合も、じっさいにポンプをバラしてみるまでは100%確信できませんが、とりあえず修理プランでいきます。
次は、海外サイトの検索。
エボ8から正規輸出があっただけあって、UK(イギリス)がやはりエボ関連には強いです。
しかも元々、バックヤードガレ―ジの発祥地、車のDIY文化がハンパじゃありませんので、けっこうな数のサイトがヒットします。
あと、カナダのショップにも良さそうなトコ、あります。
とにかく数が多いので、まずはいっせいにメールを打って、反応が早かったトコだけ相手にします。反応遅いトコなんかに注文したら、いつ届くか不安ですからね。
その中でも、圧倒的にレスポンス良く、こちらの質問にもサクサク返答してくれたのが、
このEvolution Hydraulics Ltd、UKにあるんですが、社名がそのまんま。
ここの担当者のDan、とてもヘルプフルで助かりました。
ちなみに、今から20年前以上前に、私が最初に触れたのがUK・イングリッシュ(今の職場はUS英語ですが)でしたので、彼の英語は昔を思い出さしてくれて、とても懐かしかったです。
Danいわく、イギリスのアスファルトは塩分が大量に含まれてるので、日本で言えばすべての道路が塩カルまかれた状態と同じだそうです。
だからUKでは、ポンプユニット自体を、トランク内に移設するキット、なんてのがあるんですね。
ちなみに彼は日本に少し住んだことがあるそうで、私の居住地を聞くなり、その辺は積雪地帯じゃないからサビダメージは多分平気、なんて言ってました。
。
とりあえず彼からは、おすすめの「リビルト・キット」を購入。
これはポンプのオーバーホールの際に、必ず交換するパーツをセットにしたもの、だそうです。
内容は各ガスケット、オイルシール類、モーター軸のベアリング、腐食や固着しやすいボルト類、そしてトロコイドポンププレートをモーターに密着させるセンタープレートのセットです。
このセンタープレート、純正はアルミ製なので腐食しやすいのと、モーターで常に押されるために歪みが発生して、密着性が失われやすいとのことで、錆びにくく変形しづらい、ステンレス製で作り直した物でした。
品質はかなり良さそうです。
ガスケット類が入ってるのが助かります。
次は本命のモーター。
Danのトコは、モーターが欠品中。
そこで選んだのが、
カナダのMLR。
ここは、名前だけは前から知ってました。
VWとかAudi、BMWなどの純正相当品のパーツを、ハイクオリティで安く売ってるトコで有名でしたから。
しかもここのモーター、他のUK勢のショップより、全然安い。350ドルくらい。
しかも発送最速。
注文から到着まで、わずか4日。
Amazon.USAより早いかも?
このモーターも、かなり品質が高そうな造り、期待できる。
あとで外した純正と見比べて分かったんですが、純正よりもちょっと大きい。
出力上げてあるみたい。
MLRからの指示で、ポンプリレーは必ず新品に替えろってありました。
まあ、以前に交換してまだ1年ならないくらいだから、大丈夫でしょう。
さあ、ネタは揃いました。
あとは交換作業だけ。
最初は自分でやろうかとも思いましたが。
でもどうせエア抜きで、ショップ行かなきゃならない。
すでに相談してたテストアンドサービスさんに依頼します。
ACDポンプの修理作業
オーリンズのOH以来ですよ。1年ぶりの来店。
この日悔やまれるのが、せっかくピット内で作業を間近で見れたのに、スマホを家に忘れて出てたってこと。
ACDポンプをバラしたとこなんて、けっこうレアだったのに。
ネットでも、ほとんど上がってないですよね。
あっという間にポンプが降りて、サクサクと分解。
まずホッとしたのが、ポンプケースに腐食による白サビが全く無かった事。
ただ単に、汚れてただけ。クリーナー吹けば、かなりキレイな状態。
16万キロ使用したワリには、相当良いコンディション。
マネージャーさん、お手製っぽいツールで動作テストすると、ソレノイドは問題なし。
私のポンプは、AYC無しのRS用、ソレノイドバルブは1本しかありません。
これがGSRのAYC付きだと、AYC左右用に、あと2本、計3本のバルブが刺さってます。
ソレノイドバルブですが、バルブの故障、動作不良という壊れ方、ほぼ無いようですね。
バルブがダメになる時は、腐食による破損、具体的にはバルブボディの金属部と樹脂部の部分から折れてしまうようです。
よって、全体の腐食が無かった私のポンプでは、ソレノイドバルブは心配なかった。
この折れたバルブ、樹脂部を金属で作り直した補修パーツが、先述のUKのショップ等で販売してます。つまり、ソレノイドバルブも修理可能。
ただ、補修方法が、けっこうな力技なんです。
このバルブ、非分解構造なんですが。
要は力技で、接合部のリムのカシメを広げて、破損パーツを入れ替え、またカシメ直すという。
これはDanから送られてきた作業中の画像。
これ、かなり器用じゃないとキビしいかも?
そしてモーターは、予定通り死んでる。
モーターを固定してるロングボルト2本、前述のみん◯ラの記事と、ショップさんのブログ記事では、どちらもサビ固着してて折れたようですが、私のはすんなり外れました。
ちなみに、み◯カラ方のポンプのセンタープレート、けっこう腐食の侵食がありました。
やっぱり、融雪剤などの影響の大小で、コンディションに大きな差が出てるようですね。
積雪地在住の方、トランク内への移設を真剣に検討した方がいい気がします。
センタープレート部までバラしていく。
これが帰宅後に撮ったセンタープレート。
実際のところ、このパーツは交換する必要、まったく無かったですね。
腐食も歪みも、いっさい出ていません。
ガスケット、Oリング類も、とくに目に付く劣化は見られませんでしたが、一応は交換。
ボルト類もせっかくなので、キットに入ってたステンレス製に交換。
今回、別々のショップから、リビルトキットとモーターを個別に購入してるため、付属するガスケットやボルトに、けっこうダブりが出ました。
ブラケットにポンプを戻して、車体に固定。
ACDフルードを入れて、エア抜きして終了!
ACDポンプ、見事復活ですよ。
最後に、修理に掛かった全費用ですが。
円レートが、1$=147円で、
モーター 50000円 前後
リビルトキット 10000円 前後
工賃 41000円 くらい
約10万円。
純正ポンプAssy交換の場合は、約35万円。
差額の25万円で、今回は未交換のソレノイドバルブとアキュムレイターも新品になりますが、それを高いと見るか、あるいは妥当と見るかは、アナタ次第。
ただ、積雪地帯で乗られてる方。
ポンプケース自体が、すでに白サビだらけの場合。
その場合は、素直に新品Assy交換が良いかもしれません。
そして交換後は、リアトランク内移設をオススメします。
元々、あのポンプ設置位置が良くないですよ。
リアタイヤで掻いた塩入り泥が、かぶりやすい上に溜まりやすい。
さて、ACD機能復活ですが。
この作業日まで、約1ヶ月ほど、ACD無し、フリーデフ4WDで通勤してました。
その間のクルマの挙動ですが。
まずターンインの鼻先の入り方は、ほとんど変わらなかったです。
私のACD-ECUは、故・滝沢氏のCyberEvoのデータが入ってます。
このデータだと、ターンイン時はデフフリーに近い設定のはずなので、当然といえば当然ですか。
しかし、フリーデフ状態では、コーナー脱出時は、FFのような、100%フロンデフに依存中ってカンジでした。遅いというか、かったるく感じます。
そして一番違いを感じたというか、センターデフのありがたみを感じたのは、ブレーキング。
フリーデフでのフルブレーキングだと、不安定というか、ちょっとヒヤっとする挙動を示しました。
ちなみに上の方で、テストアンドサービスから伝えられた衝撃の事実って前フリしましたが。
発表は11月だったので今さらですが、なんと今年いっぱいで事業撤退されるそうです。
理由は、いろいろお聞きしましたが、ここでは書きません。
レース屋さんとしての矜持とだけ、書いておきます。
私のような客からすれば、ショップとしてのテストアンドサービスの大ファンでしたので、今回のご決断は残念すぎます。
しかし、本来はテストアンドサービスは三菱ワークスであり、ラリーアートそのものなんですよね。
そこを考えますと、私なんかがアレコレ言えることは無いです。
50年もの長い間のご活躍、お疲れ様でした。