前回の記事で、ちょいと伏線を残したエンジンチェックランプの点灯なんですが。
エラーコードは、P0400。
これ、「EGRバルブなど。もしくはECUの異常」ってエラー。
ECU異常ってのは、まあ無視してイイとして。
だってECU故障なら、まともに走ってないし。MUT-2での通信にも、異常が出てるはず。
エンジン自体は、とくに異変は感じません。
これはEGRバルブが故障気味、時々動作しなくなってる、ってのがエラーの理由でしょう。
おそらく、閉じてなきゃいけない時にも少し開いちゃったまま、とかね。
EGRバルブは、エンジンの本来のパフォーマンスとは何の関係もない、いわゆるエコ系パーツ。
排ガス規制対策系のパーツです。
ランエボの4G63には、規制強化の前、CP辺りにはもう装着されてたはず。
EGRというシステム。
Exhaust Gas Recirculation (排ガス還元)のことで、要はエキマニから排ガスの一部をインマニに戻して、再燃焼させるってシステム。
目的は、NOX値(窒素酸化物)を下げること、そして未燃焼ガスを再燃させて、燃費向上を図ること。
イマドキのエンジンには、欠かせないシステム。
そしてシステムには、この4G63のようにエンジン外部にバルブや配管を付けて、じっさいにエキマニから排ガスを取り入れてインマニ、サージタンクに送り込む「外部EGR」、そしてエンジン内部で、InとEXのバルブのリフト量とタイミングをECUでコントロールして、擬似的にEGR効果を発生させて行う、「内部EGR」があります。
イマドキのハイテク可変バルタイ直噴エンジンは、多くはこの内部EGR。
外付けのバルブなどはありません。
でもエボの4G63は、戦前の古いエンジン(何の戦争の前だ)。
エンジン外部に、がっつりと配管とバルブが載っかっております。
余談ですが。
ネットで、ランエボのEGRバルブで検索すると。
ごく一部なんですが、4G63特有の2次エア供給システム、いわゆるミスファイアリングシステムのバルブ、正式名称「2次エアリードバルブ」と混同してるコンテンツがあります。
この間違い、プロのショップまで、やっちゃってるトコあるんですよね。
このように2つはまったく別物です。
EGRバルブ単体だと、こんな見た目。
ちなみにエボに付いてるEGRバルブ、バルブ内にステッピングモーターなどを持たない、ただの負圧開弁式バルブ。バルブの開閉は、少し離れたインマニ裏にあるソレノイドバルブが、ECUからの指示で行います。
このソレノイドバルブ、今から6年ほど前に壊れたことあります。
問題はこのバルブが設置されてる場所。
インマニの裏の下側、という困った場所にあり、目視は出来ないし手も入りにくい。
私はDIYでの作業はさっさと諦め、ショップに任せました。エンジン傾けないと作業はムリじゃないか?と、その時は思いましたので。(じっさいは、傾けなくても何とかなりそう)
今回はEGRバルブ本体ですので、作業効率はちょとだけマシです。
ただ、こっちもバルブ本体が目視できるようになるまでには、ある程度の手間が掛かります。
EGRバルブはスロットルボディの下、ISCバルブのさらに下にあります。
さて、このEGRシステムですが、じつはこのシステム、エンジンのパフォーマンス的には、百害あって一利なし。
そりゃそうです。せっかく、三菱が誇るTD-05-16Gタービンで圧縮したエアをサージタンクに送り込んでるのに、そこに燃えカスでほぼ無酸素の排ガスを混ぜちゃったら、燃焼効率的にいいワケない。
しかも一部とは言え、排ガスをエキマニからバイパスさせてるので、タービンを回す力も逃げちゃってます。
ぶっちゃけると、EGRがあることでエンジンはパワー、レスポンスともにダウンしてます。
そしてこれが最も問題なんですが、排ガスを入れてしまってるので、「煤(すす)・カーボン」が溜まりやすい。
EGRによる煤問題っていうと、ディーゼルエンジンの問題と思われがちですが、ガソリンエンジンでも程度の差はあれ、同じです。
もうね、だいたい環境問題対策系のシステムってのは、多くの場合はエンジンにとってネガティブなモノばかり。
さて長々と書きましたが、今回のトラブルの対処の仕方、私は最初はEGRバルブのクリーニングで対応するつもりでした。先程も書いたように、エボのEGRバルブはただの負圧式バルブ。
基本、壊れるっていうのはあまり無い。
作動不良の場合、煤が大量に詰まってるだけでしょうから、キャブクリーナーなんかで洗浄してやれば復活するはず。ダメなら新品交換。パーツはまだ出ますし。4万近くするけど。
ところが、EGRバルブについて勉強すればするほど、だんだんと「コンナモノイラネー病」が発症してきた。
そしてEGRバルブについての調べ方も、だんだんと撤去に関する内容にシフトしていく。
なんかスズキのジムニーとかアルトのエンジン、K6AとかF6Aなんかだと、EGRバルブを完全撤去するのが普通らしい。
日本での事例では、バルブ撤去は上記のエンジン以外だと、ほぼ見つからないんですが。
後述しますが、日本だと車検の問題がありますので。
ただ海外だと、4G63のバルブ撤去は、かなりのムーブメント!
Youtubeなんかでも、バルブ撤去の動画がガンガン上がってますし、海外のエボ系フォーラムを覗いてみると、かならず話題に上がってます。
そこらでの経験者達の意見を鵜呑みにすると、EGRバルブ撤去後は、エンジンパフォーマンス的には、イイコトしか無いそうです。
もうアタマの中は、EGRバルブが取り除かれた跡のイメージしか浮かばない。
でも、撤去によるデメリットへの不安が、完全に振り払えない。
そこでハッと思い出した!
エボⅦと、エボⅨワゴンのみに設定のあったグレード、GT-A。
トルコンAT、オートマミッションのグレードですが、あのエンジンは確か2次エア供給システムが付いてなかった。だからエキマニも穴が空いてない専用品だったはず。
2次エア用のエキマニの穴が無ければ、EGRバルブへの排ガス供給もないはず。
アレって、EGRバルブはどうなってんの? ひょっとしたらバルブ付いてないんじゃ?
さっそく、Partsfanでチェック。
やっぱり無い!
EGRバルブがあったトコは、ただのプレートでメクラになってる!
バルブのみならず、ソレノイドやホース類のシステム全体が、からっぽ!
これが何を意味するかと言いますと。
つまりですね、このCT以降の4G63エンジン、べつにEGRが無くてもNOX値はクリアしてる可能性が高い、ってこと。
ということは、車検時の排ガス検査、これもたぶん通る。
私がEGRを気にするようになったのは、ほんとにここ最近。
それまでは、その存在をかろうじて知ってただけで、気に留めたコトなかった。
今思えば、等長エキマニなんかに交換してる人達とかって、何人かはEGRバルブは撤去してたのかも?
この車検に通るかどうかが、撤去に関する懸念だった。
もう一つの懸念は、燃調、点火時期的にどうよ?ってトコ。
まずEGRバルブが作動するのは、限定的らしい。
高回転時とか、ブーストが掛かった時は閉じてるとか。
ということは、燃調はあまり気にする必要は無さそう。
っていうか、私のエボの現状だと、この閉じてなきゃいけない時に、少し開いたままになってる気がするんですよね。ブーストの掛かり方から見るに。
点火時期ですが。
他車のEGRシステムだと、排ガスはインマニに向かう前に、EGRクーラーなるパーツ(インタークーラーみたいなヤツ)を通って、かなり冷やされてからインマニに入ってる。
これで燃焼室の温度をクールダウンする。
燃焼室の温度が下がった分、点火を進角できるんですが、これが温度が高いままだとノッキングの危険が出てしまいます。
でも、4G63の展開図を見ても、EGRクーラーなんかは見当たりません。
どう見ても、冷却無しで直にサージタンクに戻してるようにしか見えない。
つまりバルブ撤去による燃焼室の温度変化、こちらも気にする必要無さそう。
むしろ高温の排ガス入れないだけ、温度は下がるんじゃ?
あと、最後の懸念。
それはエラーが出っぱなし、エンジンチェックランプが点きっぱなし、になるのでは?って懸念。
これは当然、そう思いますよね?
だってEGRバルブの動作不良でエラー出たんなら、バルブが消えてしまえば、ずっと動作不良と認識されて当然では?
コレに関しては、海外のエボのフォーラムで聞いてみました。
すると経験者の全員が、チェックランプは点灯しなかったという発言。
ちゃんとECUのマップの動きを見れる人なんかでも、撤去後もへんなマップ読みに行くとかの異変はまったく起きてないそう。
ただ、なぜ点灯しないのか、エラーにならないのかは、誰もちゃんと説明できなかった。
懸念材料は完全にクリア。・・では無いですが。
とりあえずヤってみます。
まあ仮に失敗であっても、その時はバルブ本体を清掃して、元に戻せばOkay!
EGRバルブ撤去の準備
まずはパーツ集め。
最低限で必要になるのは、バルブを撤去した後に何かでメクラしなきゃならない。
とうぜん、GT-A用に純正パーツがあるのですが。
MD103510が部品番号。
こんなヤツ。
コレがどうも、製造廃止かバックオーダーだかで、入手できない。
海外のサイトも当たってみたんですが、どこも在庫が無いそう。
まあ、ただのフタなんで、最悪自作すればいいか。
と思って、材料を買おうと物色してたら。
いやあ今はホント、いい時代ですよね。
ネット上で材質と数値を指定して、加工して送ってくれるサービス見つけました。
→ここ
ミスミでやってる、金属加工サービス。
しかも安い!
今回選択したのは、SUS304-2Bのステンレス材の3mm厚。
これをMD103510っぽく加工する数値を指定。
同じようなモノを、他の加工業者で頼むと、だいたい7000円ぐらいは掛かる。
ミスミで発注したら、送料入れても2000円で済みました。
MD103510の純正価格が3500円ぐらいなんで、ワンオフで作ったこっちの方が安い!
で、作ったのがコレ。
ミスミでは、あまり細かい加工は受けてないので、まあカタチはちょいと違いますが。
じゅうぶん役に立つ。だって、ただのフタなんで。
ガスケットの面積分ちゃんとカバーしてれば、まったく問題ない。
後はサージタンク側の周辺に干渉しなければいいが、こればっかりは組付け本番まで分からない。
あと正直言って、ステンの3mm厚なんて、こんな強度を持たす必要は無かったですね。
ガスケットは、MD088604なんですが。
なんか番号が変わって、MD119127になってる。
コレ。
なんで部番が変わったか、まったく不明。
製造する下請けの変更?
あと、取付用のボルト。
EGRバルブのベース部分と、カバー用のプレートでは厚みがまったく違う。
そのため、元のボルトは長すぎて使用できない。
カバープレート用の12ミリのショートボルト、別にサイズさえ合えば、何でもイイ気もしますが、ついでだったので純正品。
MF240051が、カバープレート用の短めバージョンになってます。
コレ
あとは、EGRバルブに向かうバキュームホース、撤去作業前なので使用されてるホース径が分からない。
が、たぶん4パイ。6パイでは無いと思いますが、4パイも6パイも手持ちがあるので問題ない。バルブがいなくなるので、必要なのはメクラ用のボルト。
これはモノタロウで、Oリング付きのステンキャップボルトを3サイズほど買っとく。
とりあえずこれで必要なモノは揃いました。
実際はこれらに加えて、スロットルボディに繋がってるクーラントホース2本も購入。
作業前の下見だと、この2本のホースが邪魔になりそうな気がするんですよね。
なんか、こいつらを先に撤去しないと、ラチェットを回すスペースを取れなさそうな気が。
それにこの水回りのホース達、片方からすでにクーラント漏れちゃってます。
正確には、滲みが発生した後、クーラントが固まって塞がってる。
漏れはほとんど無かったようで、クーラントの減りも無かったのですが。
どうせ外すので交換します。
この水回りのホース交換は、別記事にします。
ホース交換はコチラ
それでは作業の開始です。
ちなみにEGRバルブを撤去する際は、バルブを動かすソレノイドバルブや配管、その他一式を全撤去してもいいのですが、今回はバルブ本体のみ、とします。
理由はですね。
いつでもバルブを戻せる状態にしときたいから。
排ガスのNOX値が予想より悪かったり、万が一何らかの不具合が出た場合は、バルブを元に戻さなきゃなりませんしね。
それにEGRの全システムを撤去しちゃうと、関連する2次エア供給システムも撤去しなきゃならなくなる。
いずれはヤルかもですが、今回は面倒なんで放置。エキマニのあのボルトがすんなり外れるとは思えないし。
EGRバルブ撤去
今回はスロットルボディのクーラントホースも交換するので、まずはラジエーターから水抜きますが、その辺はこの記事では省略。
とりあえず最初は、EGRバルブに到達するまでのスペースの確保です。
まずはバッテリーのマイナス端子を外して養生。
これはEGRエラーのリセットというよりは、バルブが無い状態で再学習させる為。
そして、スロットルボディに刺さるインテークパイプ、コイツを外す。
次はスロットルボディに刺さってる、2本のクーラントホースを外す。
奥側のホースを外すのに、ISCバルブがジャマ。
仕方なくISCバルブも外す。
バルブはⅨ用に交換してから、もう4年以上経ってますが。
まったくカーボンが付着してないのは、年末にNC-121施工してるからでしょうね。
ちなみに、この2本のクーラントホースの取り外し、2時間近く取られて大ハマリ。
詳細は別記事で。
ここでようやく、EGRバルブとご対面できる。
ご対面と言っても、実際は他のパーツがジャマでほとんど見えない。
とにかくこの辺りは手が入りづらくて、作業性はホントに最悪。
まずEGRバルブに刺さってる、バキュームホース2本を外さなきゃならないんですが、
1本はいいんですが、片方がパツパツでまったく余裕がない。
これって、エンジン単体の時にピッタリの長さでホースの取り回ししてあって、エンジン積んだ後の車載状態での作業性なんて、これっぽっちも考慮してないんですよ。
もうアタマきたんで、ホース2本とも叩っ斬っちゃう。
斬!ですよ。
どうせこの長さじゃ、継ぎ足ししないとメクラ打つ作業が不可能ですし。
ホースジョイントの手持ちは、4パイー6パイ変換用のヤツしか無かったんで、仕方なく延長部分に使用するホースは6パイのブツを。
メクラ用に購入しといた専用のボルトは、4パイ用だったんで使用不可。
手持ちの8ミリのボルトをねじ込んで代用。
メクラ終わったら、適当なトコにまとめとく。
そしたら、バルブを止めてる2本の12ミリのボルトをゆるめて、EGRバルブ本体を取り外す。
ようやくバルブ本体と会えました。
やっぱり煤だらけ・・・でもない。
もっと穴が塞がるほどの煤だらけを想像してましたが。
NC-121施工で、ある程度は落ちたのか?
ただ、中のシャフト部分は、固着した煤がカリカリに硬くなってヤバそう。
外したバルブ本体、後日にクリーナーでガッツリとクリーニングします。
今はインマニ側の穴を、ちょいとクリーニング。
そしてワンオフのカバーを取り付け。
この取り付け部分、さいわい周りに干渉するものがなく、形の違うワンオフのプレートでも問題なく付けられた。
素材の名称、SUS304-2Bと言うんですが。
SUS304は、よく聞くステンレス材の名ですが。
2Bというのは、光沢に特徴がある素材だそうです。
なんかキラリ!と輝いていてカッコイイ。
この後、すぐに見えなくなりますけど。
さて、スロットルボディのクーラントホース2本のせいで、心が折れそうだった今回の作業もようやく折り返し。
あとは外したパーツを元に戻していくだけ。
まあ実際は、新品のホース付ける時にも、ちょっとハマるんですけどね。
さて、スロットルボディのクーラントホース外すためにクーラント抜いちゃってるので、クーラントの補充とエア抜き、やらなきゃなりません。
エア抜きとECUリセット、手抜きして同時にやります。
バッテリーを繋いでエンジンON!
「ドウッ」
おお!掛かり方が元気いい!
いや実はですね、EGRのチェックランプが点灯しだした辺りから、冷間時のエンジン始動がおかしくなってたんですよ。
なんか2気筒づつ、バラバラによろよろするような、元気のない掛かり方。
いったん回りだせば、すぐ普通に回ってたんですが。
これもバルブ半開きのせいだったのでは?
嬉しくなって、いったんエンジン切って、また掛け直しちゃいました。
「ドウッ!」
そしてエンジンチェックランプ。
点灯しておりません。
消えております。消えやがっております。
エア抜き中も、まったく点灯しません。
しかし、エラーログが消えたワケではないので、そのうちまた点灯するはずです。
MUTなどで、ログを消さない限り。
ログ消去後に再点灯しなければ、今回の作業は成功なんですけどね。
もし再点灯したら、今度はEGRソレノイドのカプラー抜いてみます。
さて、実走行の方はどうか?
いつものプラシーボのスイッチはオフ。
今回はマジで違いをチェック。
まず、アイドリングから3000回転ちょいぐらいまで、ここら辺のアクセルのツキがいいです。
EGRをオフると、低速トルクが上がると聞いてましたが。
たしかにちょっと、そんな風に感じられる。
そして回していくと、やっぱり元気がいい!
これは、トルクですね。
やはりトルクが全域で上がってる気がする。
エンジンの回り方、コレは特に変化は感じないです。
エンジンは今までと同じように回ってますが、トルクが追加されたようなフィーリングです。
まあこの結果は、当たり前といえば当たり前。
燃焼室に不浄なガスが入らなくなったんだから、燃焼効率上がってトルク出るのはとうぜん。
正直、この走りだけで、今回の作業はやって良かったと思えます。
しかし、EGRバルブの撤去の真価はここから。
私がいちばん期待してるのは、エンジン内のカーボンスラッジの減少。
距離を乗ってると蓄積される、カーボンスラッジ。
元は煤(すす)ですが。
もちろん通常の燃焼行程でも煤(すす)は発生しますが、EGRでわざわざ排ガス送り込んで届けるほどじゃない。
EGRからの煤の供給が止まれば、エンジン内部のカーボンスラッジは減っていくはず。
この長期的な効果が、今回の作業のいちばんの狙いです。